2003.10.20
第13次春教組教育研究集会

 

10月20日(月),グリーンパレス春日井において,第13次春教組教育研究集会を開催しました。分科会での発表・協議の後,中京大学の杉江修治教授を講師にお招きし,全体会を開きました。

第1分科会

■美術教育
 かすがい市民文化財団との共催による文化フォーラムでの学校美術館の実践が紹介された。児童・生徒だけでなく,より多くの市民が美術に親しむ機会となり,地域との関わり,認知度が高まったことが報告された。

■技術教育
 校内の修繕活動を通して,子どもたちが自分たちの知識や学習してきたことを生かして積極的に活動している姿が報告された。また,情意面も豊かになり,生徒に成就感や満足感を与えることができたことが強調された。

■外国語教育
 少人数指導のメリットを生かしたコミュニケーション能力を高める指導法について実践が報告された。自己表現が苦手な子も意欲的に取り組んだ姿など,少人数指導の有効性が確認された。

■国語教育(作文・その他)
 創作単元の実践を通して「話す」「聞く」「書く」ことのそれぞれの力を相互関連的に向上させる取り組みが報告された。子どもたちがお互いに高め合う姿が紹介され,取り組みの有効性を確認することができた。

第2分科会

■家庭科教育
 「人とのかかわりを育てる家庭科学習」をテーマに,6年生の児童の実態に合わせ,基礎基本を大切にした実践的・体験的な授業実践報告がなされた。おすすめ料理を隣のクラスの児童に作るというユニークな試みを通して,人とのかかわりを目指した授業内容であった。

■読書
 学校図書館のコンピュータ化による蔵書管理のメリットや,頭の2桁を学校番号にすることにより,ひとつのデータベースに統一できたり,限られた予算の中で特色ある選考基準を持って図書購入ができるなどのメリットが紹介された。

■生徒指導
 「いじめを生まない集団作りをめざして」をテーマに,いじめに関する調査結果をふまえた,いじめを否定する授業や,心のノートを利用した思いやりについての授業の実践報告がなされた。授業実践後,いじめに関する調査を再度行ったところ,いじめを肯定する生徒が減少したとの報告もあった。

■視聴覚
 「全学年,全学級が使えるホームページが理想のホームページである」との考えに基づいたホームページの構築過程が,詳細に報告された。ネット図書館や,子どもが必要とする情報量も多く,これだけのものを立ち上げるまでの苦労が伝わってた。メンテナンスの時間確保が課題であるとの指摘もあった。

第3分科会

■音楽教育
 中学校で音楽の授業をすることの難しさを感じる中,「音楽通信」を発行して,教師と生徒との心の交流に成功した実践が発表された。教師の本音や友達の気持ちにふれることができる「音楽通信」は生徒の心を開かせ,音楽の授業にも主体的に参加するようになったと報告された。本音が書けるようにペンネームを使ったり,卒業生の言葉を生かした点も注目された。

■障害児教育
 子どもも教師も楽しんで活動でき,獲得した力が生きる意欲につながることをねらって「和太鼓」に取り組んだ実践が発表された。どの子も楽しく参加できると同時に,身体的協応の訓練になり,協調性や社会性も養えるなど,和太鼓の良さが多く紹介された。また,発表の機会を多く持つことで自信を持ち,子どもたちが,さらに意欲的に取り組む様子が報告された。

■生活科教育
 小学校では年少者扱いされる1年生に「自分たちも役に立つんだ」という自信を持たせ,自立心を培うために,幼稚園児との交流に取り組んだ実践が発表された。「1年生が幼稚園へ行き,小さい子の世話を上手にして遊んであげる」という活動は,予想以上に児童の意欲や自信を高めたと報告された。また綿密な計画と,幼稚園の先生や保護者との連携も注目された。

■保健体育教育
 養護教諭自らが専門性を生かした授業を行い,「心とからだの健康に関心を持ち,自らの力で生きようとする子」の育成に取り組んだ実践が発表された。小学校で,エイズ感染者とのメールの交換を通して,病気の人と共に生きる思いやりの気持ちを育てた実践や,中学校で「初めてのキスの動機」から男女の性心理の違いを考えさせ,性的自立を考えさせた実践などが報告された。

第4分科会

■数学科教育
 思考力・判断力を高めるために,統合的な考え方が生かせる教材を開発し,学習過程の中で「振り返る」段階を重視した実践が報告された。生徒自身が自分で考え,発見する喜びを味わうことのできる取り組みであった。

■理科教育:生物・地学
 「自然・科学技術・人間生活の調和」を考えていくことができる生徒の育成を目指して,酸性雨・燃料電池を教材化した実践が報告された。未来社会へ明るい展望を抱かせる取り組みと評価された。 

■社会科教育:小中
 「未来を創造する力」を育成するために,地域に公民的アプローチから迫る社会科学習のあり方を研究し,小学校では,これからの水道事業を考えさせる実践,中学校では,地域防災のあり方を考えさせる実践が報告された。

全体会(杉江先生の総括講評)

■現在の教育改革について
 教育改革の議論の多くは素人の教育改革である。
流行ばかりが目立ち,不易の部分がおろそかになっている。こういうときこそ,不易の部分から流行をとらえ直すことが必要である。これまで積み重ねてきた実践研究や教育文化が大切であり,それに裏打ちされた必然性から教育が行われなければならない。

■教育の目的
 教育の目的は,人格の完成であり,民主主義を支える人間をつくることである。そのためにも日々の授業が大切なのだが,受験やテスト,学力問題にあまりに目が向いてしまうと,この大切な目的が見落とされてしまうことになる。

■個性化教育
 「人は一人ひとり違う」ということが強調される。そこには個を育てるという発想はない。
 個性化教育には,一人ひとりの教育権を保障するという考えが大切なのではないか。そのためには学校がその環境を整える必要があり,「人はいかに同じか」という議論のもと共通性を踏まえた教育活動がされるべきである。

■学力追究
 少人数授業というのは,ティームティーチングスタッフを増やすことで授業を最適化する選択肢を増やすということである。そこには教師のアイデアを生かす場面が出てくると思う。
 たとえば少人数授業はTTの1つのバリエーションであり,子ども主体の学習形態がとれ,効率的な授業ができる。単元の最後で理解の遅い子に指導をする時間を設けるなど,単元単位で勝負する必要があるだろう。さらに,基礎コースを選ぶ子の理解ができる学級も必要だろう。学級集団づくりが大切だ。
 少人数学級を機能させるためには,評価が要になってくる。子どもに成長の手応えを知らせる方法を研究しなければならない。そういった意味で,本物の学力とは何か,ぜひ追究して欲しい。