2004.10.18
第14次春教組教育研究集会

 10月18日(月)グリーンパレス春日井において「子どもたちの健やかな成長をめざして―21世紀を生きぬく力を育むために―」をテーマに,第14次春教組教育研究集会が開催されました。どの部会もハイレベルで熱心な討議が行なわれていました。また,全体会では,講師に中京大学教授の杉江修治氏をお招きし,総括講評をいただきました。

第1分科会

<国語教育>
 家族・友達との会話の減少が見られる中,自分の思いを言葉に表す力や相手の表情を読みながら,細かいニュアンスを伝えたり,相手の気持ちを読み取ることのできる子どもの育成を目指した実践が報告されました。集団で学習するメリットを生かし,継続的な読み聞かせや,読書アニマシオンの活用,工夫を凝らしたワークシートを取り入れた授業実践から,子どもたち自身が共に学びあう喜びや,互いの思考や存在を認め合う喜びを感じ取っている姿が紹介されました。
<外国語教育>
 学習した題材を用いたコミュニケーション活動を多く取り入れることで,言語としての英語に興味を持つ生徒が増えると考え,スピーチや暗唱を目指したリーディング,発表を目指したペア活動,自分について表現するライティング,頑張りカードの活用などの実践が報告され,自分の思いを英語で伝えることで,多くの生徒が意欲的に取り組む姿が紹介されました。
<数学教育>
 単元進度表と授業プリントを使って学習を進めることで,生徒は学習に見通しが持て,自分で学ぼうとする意欲や学び方を身に付けることができました。自己評価することで,自分の理解度を確認することができ,教師も理解度を知ることができ,また小単元ごとに小テストをすることで,意欲的に復習したりする生徒が見られるようになったと報告されました。
<音楽教育>
 参加意識が持てる授業にするためにワークシートを活用し,1時間の中で「これはできた」という気持ちを持たせることができ,クラスソング創作活動をすることで,音楽をより身近に感じさせることができるようになった様子が紹介されました。また,自由演奏発表会では人前で楽器演奏することで,さらに音楽に親しみ身近に感じさせることができるようになったと報告されました。

第2分科会

保健体育(体育)>
  中学校における「選択制授業」「男女共習授業」についての報告がされました。男女共習授業では男女別の評価基準を作成した実践が,選択制授業では種目内の移動を緩やかにしたり,学習カードを使用して個人の目標をしっかり持たせたりした実践が紹介されました。研究を進めるなかで,男女別習についても大いに参考になる工夫を見つけることができました。
<保健体育(保健)>
  学年に応じた性教育のプログラム作りに取り組むことから,豊かな人間関係を培うことができる生徒の育成を目指した実践が報告されました。子どもの性行動の低年齢化に歯止めをかけるには,正しい知識の理解とそれを受け入れることのできる心の豊かさの双方が必要であり,また家庭教育との連携をはかり,生命尊重の精神や自己肯定感情を育てる必要があるとの課題が示されました。
<生活指導(中)>
  コミュニケーションを心と身体が一体となって行われる行為であると捉え,人とコミュニケートできる「身」を育てるための実践が報告されました。「土壌を作る」「身を知る」「身になる」「身をもってあらわす」の4つの実践を通して,学級を親和的な雰囲気をもった柔らかな「場」にし,さらに子どもたちがコミュニケーションの能力を高める実践が紹介されました。
障害児教育>
  身体的協応能力を高めるために,ヒップホップダンス,太鼓やリズム遊び,絵描き歌など体を動かす活動を取り入れた実践が紹介されました。協応運動は,個の参加を促すものであり,共に楽しめるという要素を持つ,さらにその子なりの達成感が持てることなど,幅広い教育的意義をもっており,長期にわたる積み重ねが児童の成長に結びつくと報告されました。

第3分科会

<生活科教育>
 1年生が,自立心を養い,自信を持って生活できる基盤作りをするために,年に三回の幼稚園の年長児との交流に取り組んだ実践が発表されました。一学期には,年長児のお世話をして自信をつけ,二学期には地域の人から教わった伝承あそびを教えてあげて,更に自信が深まった様子が,そして三学期には,学校に来るのが楽しみになるような感謝の会を開くことができたことが報告されました。
<家庭科教育(小)>
 学校の調理実習で作った料理を「家族にも紹介して食べてもらう」という,家庭での実践化を目ざした授業実践の報告でした。5年生の子どもたちが,初めての調理実習に楽しそうに取り組み,「もっと作りたい」「家族にも食べてもらいたい」などの感想を述べ,主体的な学習の様子がよくわかりました。
<特別活動(小)>
自主的な集団活動を高めるために,STEP1(学級の場面で基礎的なスキルを子どもたちに習得させる),STEP2(学年集会リ−ダ−会・委員会などの場面で友達とのかかわりを深める),STEP3(縦割り班の活動で積極的な取り組みをする)の段階的な取り組みについて発表されました。
<現代文化と教育(読書)>
 春日井市学校図書館研究会が作成した「学び方ガイド」の様々な場での利用を通して,主体的に学ぶ力を育てる図書館教育の授業実践の報告でした。国語科での知りたい植物を図書館で調べる実践や,総合的な学習の時間での福祉についての学習の報告がありました。どの実践でも主体的に活動する子どもたちの様子がよくわかりました。

第4分科会

<理科教育(生物・地学)>
  理科離れを防ぐために,体験を通して理解を深める実践が報告されました。具体物を通して,人の体の仕組みのすばらしさを実感させるため,骨格や筋肉の働きを模型を使って実験したり,灯油ポンプを使って心臓の働きを理解させたりする様子が紹介されました。
<社会科教育(小)>
 「未来を想像する力」を育成するために,地域の問題に対して公民的アプローチから迫る社会科学習のあり方を研究する実践が報告されました。急増する犯罪に対して,防犯の立場から市や警察に要望することで,児童の主権者意識を高めることができました様子がよくわかりました。
技術教育>
 校内の修繕活動を通して,子どもたちが自分たちの知識や学習してきたことを生かして積極的に活動している姿が紹介されました。施設を大事にしていこうという意識や,生徒に成就感や達成感を与えることができたという情意面での成果が報告されました。
<美術教育>
 「かすがい市民文化財団」との共催で行われた「学校美術館inかすがい」の活動が,今年も行われました。中学校の生徒だけでなく保護者や地域の住民も,芸術家の作品を見ることができ,作者が開くワークショップに希望者が参加して作品を作ることもできるようになり,認知度が高まってきたという報告がされました。



■春教組教研ついて

 それぞれの実践が教科ごとの共有財産ではなくて,教科・領域を超えて交流を積極的に図っていただきたい。教研のテーマ「この時代を主体的に生きていく子どもをどう作っていくか」は,本質的でありながら現代では先進的なテーマである。問題を発見し,それを掘り下げていくという実践のスタンスは大切である。

■習熟度別指導について

 10年前は習熟度別指導を7割の先生が反対していたが,今はどうやってやるかという発想しかできていない。習熟度別指導という前に,個に応じた指導が大事である。習熟度別指導は個に応じた指導の選択肢の1つにすぎない。周りの状況から1歩踏み込んだ思考が大変重要な時代になっている。

■授業改善の観点

 これまでの授業改善の議論は,ほとんどが指導論で終わっている。学習は子どもの仕事,指導は教師の仕事。教師がいかにがんばるかという指導論ではなく,本当に子どもが変わるには,学習論がもっと重視されなければならない。授業改善を考えるとき,指導論から学習論への大きな文化の転換が必要である。

■どうやって授業を変えていくか(協同学習をどう授業改善に生かしていくか)

 協同学習はもっと子どもに学習を学ばせる機会としてとらえる。協同学習は方法ではなく考え方である。協同の定義は,仲間集団全員が高まることを目標とするものである。学校では,学級集団の仲間全員が高まろうと子どもたち全員が思いながら,普段の様々な活動をすることが協同学習である。一人ひとりが伸びることが大切。集団の中での高めあいを原理として授業を進めていく。協同学習の中で作っていく人間関係が本当に大切である。主体的に学習していくチャンスがなかったら,本物の学力は育っていかない。すべての指導領域で協同の原理は大変重要である。協同的な信頼関係はあらゆる場面で大きな力を発揮する。協同学習はクラス作りができてからでなく,一番最初から導入すればよい。

■どうすれば協同学習ができるのか

 協同学習を進める上で重要なのは,グループに与える課題である。授業の最初に学習課題をはっきり示すことで,子どもは学習の見通しが立ち学習が主体的になる。さらに,学びの値打ちを教え,学びの手順を教える。そうして,子どもたちに主体的な学びの構えができてから授業を進めていく。明確な課題を示すことが,グループの活動をきちんとさせる重要な要因である。課題作りをしっかりすれば,子どもは本当によく動く。まず単元の導入で単元全体の見通しをさせ,毎時の授業の見通しをさせるとよい。子どもが学んだ手ごたえが味わえる評価の工夫が必要である。学びあい,高めあいの授業を作れば本物の学力がついてくる。協同学習はヒントに満ちた指導法である。